最近お気に入りの音楽③
2009年 05月 07日
ちょっと昔なら、「チョッパーベース」なんて呼ばれていたこともある。ベースを打楽器のように叩く奏法で、60年代末から「ラリー・グラハム」という黒人ベーシストが創めたと言われている。
ロック好きなら「レッチリ」の「フリー」がプレイしているのをみたことがあるだろう。名手と呼ばれる人は、本当にたくさんいる。始祖の一人と呼ばれる「ルイス・ジョンソン」という黒人ベーシストや、日本では「鳴瀬喜博」さんあたりがオーソリティとして有名だ。しかし人気・実力ともにNO.1を一人あげろと言われれば、80年代に復活した「マイルス・デイビス」のバンドでの活動で知られる「マーカス・ミラー」だろう。
マーカスのスラップ・ベースと言えば、そのジャンルを超越した絶妙なグルーブ感、強力なテクニック、音選びのセンスの良さもさることながら、アクティブ・サーキットを内臓したベースから紡ぎ出される魅力的なその豊かな音色が、一度聴いたら忘れられない。
と言っても、ここで今回の話の中心なるのは、マーカス・ミラーではない。
マーカスの後に出てきた80年代のベーシストたちは、彼のフォロワーばかりで、気持ちのいい音だが、特徴のないモノばかり。あいかわらず、ファンクやフュージョン、ポップスなどでこの奏法がもてはやされていたが、正直、ボクは聞き飽きてしまった。・・・しかし、そこにモノスゴイ奴が登場する。
「LEVEL42」の「マーク・キング」である。
ちなみに、「銀河ヒッチハイク・ガイド」というSF小説を読んだ方なら、このバンド名に“ニヤリ”とするかも(笑)
彼のベースはスゴイ。とにかくスピーディ!マーカスが美しく洗練、進化させた「スラップ・ベース」が台無しである(笑)
このころ・・・80年代の彼は、とにかく潔いくらい、速さにこだわっていたみたい(笑)↓初期LEVEL42が、ジャズファンクをやっていた頃のライブ演奏では、こんなカンジ。
さらにソロアルバム「インクレディブル・ファンク・ベース」(原題:「Influences」・・・邦題は「ウェス・モンゴメリー」のアルバム名からとってるのかな。)に入っているベース・ソロは圧巻!速い速い(笑)
ここでスラップ・ベースの演奏方法をもうちょっとくわしく説明してみると、ベースの弦を、右手の親指で叩いたり(サムピング)、人差指で大きく弾いたり(プリング)する・・・ちょうどドラムのバスドラとスネアみたいな音を出すようなイメージで演奏される。
マークの演奏は、まさに“ドラム”(笑)・・・まあ、もともとドラマーだったらしいんだけど。
彼はドラマーだから、さらに左手で弦を叩いた音(音程はない)・・・ミュート音を右手のスラップ音に交えることによって、高速スラップ奏法が可能になったのだ。しかも左手のミュート音と右手の実音の組合せによって、より複雑なパターンを作ることが可能になった。
彼の登場により、スラップ奏法はより高速かつ緻密なものへと進化し、世界中のスラップ・ベーシストたちに大きな影響を与えた。
で、ただ速いスラップベースを弾くだけなら、その後たくさんの凄腕ベーシストたち・・・例えばタッピングもこなす「ビクター・ウッテン」などがいるのだけど、マークのさらにスゴイところは、歌いながら弾くことだ(笑)
16分の細かい高速スラップと、ジェフ・バーリンばりの力強い速弾きツーフィンガーのラインも弾きながら、メイン・ボーカルとコーラスもやっちゃうのである(笑)・・・「プライマス」の「レス・クレイプール」もスゴイベースを弾くけど、ボーカルとってるときベースは休んでるもんな(笑)
「ポール・マッカートニー」のような曲を大切にするベース・ラインを弾くベーシスト兼ボーカリストも大好きだが、マークのような存在もカッコイイよね。そうそう、同じような理由で、「ラッシュ」の「ゲディ・リー」も魅力的なベーシストだな。
ボクは幸運にも一度だけライブ演奏を観たことがある。
アルバム「フォーエバー・ナウ」(原題:「Forever Now 」)発表後、94年頃の来日時。しかし、これがLEVEL42の解散ツアーだった。お客もそれほど多くはなかったが、マークはサービス精神たっぷりにすばらしい演奏を聴かせてくれた。この時はスーパー・ドラマー、「ゲーリー・ハズバンド」は来なかったんだけど。ライブであまり演奏することのない隠れた名曲「カンサスシティ・ミルクマン」も演奏してくれたので感動。そうそう、最後に握手もしてくれた。ルックスは怖そうだけど(笑)、ほんとに気さくでいい人だ。感謝。
バンドは解散したまま、マークはソロ活動を続けていたようだが、2006年に復活。新作「Retroglide」(輸入版)を引っさげてツアーもおこなった。
このアルバム、正直、聴き所は1曲目「Dive into the Sun」と5曲目「Sleep Talking」くらいで、ちょっとこじんまりしたアルバムという印象が強い。
ポップス路線に変更した、最盛期の「World Machine」や「Running in the Family」。故A・マーフィーが名演を遺した「Staring At The Sun」。そしてA・ホールズワース参加の「Guaranteed」など。・・・それら粒ぞろいの作品群と比べると、どうしてもアルバム1枚を通して聴く気にはなれないなあ。
しかし、最近、このツアーの模様を収録したDVD「RETROGLIDE TOUR」(2008年)をポチっと購入。
これが、カッコイイの!
相棒のマイク・リンダップ(key)のファルセット・ポイスの衰えは隠せないけど、相変わらずのクオリティの高い演奏に感動。ほぼ毎日、聴きまくってます(笑)
↓「つべ」に画像が落ちていたので、貼ってみる。
・・・こういうのを観ると、また、ベースの練習をしてみようかと思う、今日この頃なのだ。